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量子が19秒で100年分を解く時代、企業が今から備えるべき3つの現実

量子が19秒で100年分を解く時代、企業が今から備えるべき3つの現実

ニュースの概要

IBMの量子コンピュータが、最先端のスーパーコンピュータでは約100年かかるとされる計算を、わずか19秒で終えたと報じられた。比較の対象になったのは、量子の振る舞いをそのまま再現するような特殊な計算課題とみられる。つまり、あらゆる計算が100年から19秒に縮むという話ではない。ただ、従来のコンピュータでは現実的な時間内に解けない問題を、量子側が実測で上回った例が積み上がってきたことは確かだ。研究の看板だった「量子優位性」が、実験室の主張から再現可能な成果へ移りつつある。本稿ではこの結果を冷静に読み解き、企業が何を準備すべきかを考える。

引用元: IBMの量子コンピュータがスーパーコンピュータで100年かかる計算を19秒で完了(GIGAZINE)

分析・見解

「100年対19秒」は何と何を比べた数字なのか

まず押さえたいのは、この数字が特定の計算課題で出たものだという点である。量子コンピュータが得意なのは、量子の状態そのものをシミュレーションするような問題だ。こうした課題は、従来型の計算機にとって極端に不利に働く。扱う状態の数が、量子ビットを増やすごとに倍々で膨らむからである。

一方で、日常の業務計算、たとえば会計処理や画像編集では、量子側に利点はほとんどない。「100年が19秒」は能力の天井を示す数字であり、平均的な速さを示すものではない。

過去の優位性報告から見える、主張と反論の繰り返し

2019年にGoogleが「1万年かかる計算を200秒で解いた」と発表したとき、IBMは「最適化すれば数日で解ける」と反論した。その後も、新しい古典アルゴリズムが量子側の主張を追い越す例が何度も出ている。

今回も同じ展開があり得る。ただし流れは変わってきた。かつては古典側が数日で追いつけたが、今は量子側の規模と精度が上がり、追いつくこと自体が難しくなっている。優位性は確実に強まっているが、決着は一度では付かないと見るのが妥当だ。

本当の壁は速さではなく、エラーの多さにある

現在の量子コンピュータは、計算中に誤りが頻繁に起きる。そのため、実用に必要な精度を得るには、誤りを自動で直す仕組み(=誤り訂正)が欠かせない。1つの正確な量子ビットを作るのに、数百から数千の物理的な量子ビットが要るとされる。

IBMは誤り訂正を前提にした大型機の開発計画を公表しており、数年内に実用規模へ近づく道筋を描いている。今回の成果は、その手前の「誤りを抑えながら大きな計算ができる」ことの確認と読める。速さの競争から、信頼性の競争へ主戦場が移ったのである。

暗号への影響は、成果の大きさよりも時間軸で考える

量子コンピュータが現在の暗号を破る可能性は、よく話題になる。ただ、今回の課題は暗号解読とは別物であり、直ちに危険が増したわけではない。それでも、暗号の入れ替えには数年から十年単位の時間がかかる。

今のうちに集めた通信記録を将来解読する攻撃も想定される。「破られてから動く」のでは遅く、成果の大小に関係なく移行計画を始める理由がここにある。

ビジネスへの影響

今すぐ導入ではなく、問いを立てる準備から始める

多くの企業にとって、量子コンピュータの購入や大型投資は時期尚早である。まず取り組むべきは、自社の業務で計算量が壁になっている問題を洗い出すことだ。たとえば、新素材の探索、物流経路の最適化、金融商品のリスク計算などが候補に挙がる。

次に、クラウド経由で量子機を試せるサービスを使い、小さな実験を行う。費用は限られ、社内に知見も残る。重要なのは成果を急ぐことではなく、「どの問題なら量子が効きそうか」を見抜く目を育てることである。

暗号の棚卸しは、量子と無関係に価値がある

情報システム部門が最優先で行うべきは、自社がどの暗号方式をどこで使っているかの一覧づくりだ。証明書、VPN、データベース暗号化、取引先との通信などが対象になる。

米国では耐量子暗号(=量子でも破りにくい新方式)の標準化が進み、政府系システムは移行期限の議論に入っている。日本企業も、取引先から対応状況を問われる場面が増えるだろう。棚卸しは古い暗号の廃止にも役立つため、空振りに終わらない投資である。

人材と提携先の確保が、数年後の差になる

量子分野は人材が極端に少ない。専任の研究者を雇わなくても、既存のデータ分析担当者に基礎を学ばせ、大学やクラウド事業者との共同研究に参加させる手がある。

実用化の時期は読めないが、準備した企業とそうでない企業の差は、市場が動いた瞬間に出る。関連の基礎知識は当サイトの量子基礎や産業応用のページでも整理しているので、社内勉強会の教材として使ってほしい。

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